ベストヒットUFO ラクソン事件(2)

 というわけで、メジャー・マイナー問わず円盤マニア的に心に染み入る、深いコクをもった空飛ぶ円盤/搭乗員との遭遇・目撃事例を、起きた月日になるべく近いタイミングで紹介していく愉快な読み物「ベストヒットUFO」が始まりました。


 もっとも、UFO事件を日本語で詳細に解説・紹介するサイトは雅さん(https://twitter.com/Galakuta09 )の「UFO事件簿」 http://giga.world.coocan.jp/ufo/index.html のような素晴らしいところが既にありますので、隙間を狙っていくことになりそうです。あるいは、メジャー事件の一見どうでもいいような細部の情報を紹介したりとか、そういった形で差別化していければと考えております。


 さて、第1回はラクソン事件を取り上げてみました。
 そもそもこの事件は日本では知名度が低く、通称も特にあるわけではないのですが、便宜上目撃者の名前から「ラクソン事件」と名付けました。円盤事件の多くはむしろ発生した地名を採って名付けられる場合が多いですが、「オクラホマ事件」とか「テンプル事件」というのも何か味気ないので……


 ラクソン事件の特色は、目撃者が地元の空軍基地に勤務している航空電子工学の専門家というだけあって、目撃証言の描写がきわめてリアル……というか物質的なところ。「大きさはC124から翼とエンジンを取り外したくらい」とか、「先端のキャノピー形状はB-26に似ていた」、「機体はアルミニウム製のように見えた」などと実際の機体を例に挙げたり、材質を冷静に判断していたりと、地に足付いた観察っぷりがうかがえます。
 実際、ラクソン事件の「未確認飛行物体」は最後に飛んで行くそのさま以外は、地球上で人間によって作られた航空機であってもおかしくはないような雰囲気を醸し出しています。なにせ、中から出てきた搭乗員も人間そのものの外見だったのですから。



 ラクソンに電話で直接の聴き取り調査をしたジャック・ヴァレが、搭乗員の印象を訊ねたところ、以下のように答えたのだとか。


『そいつが「外宇宙からやってきた奴ら」のように見えたかどうかって、みんなよく訊いてくるね。だからこう言ってるよ、「外宇宙からやってきた奴ら」なんてのがどういう風に見えるのかは知らないが、俺が見たやつが「メイド・イン・アメリカ」だってのはよく知ってるよ、ってな。それは確かさ。ごく普通の、年かさの米兵が乗っていたわけだし、そのことはよく判っている。あしたシカゴの街で出会っても、あの時の男だってことはわかるさ』


 この言葉が冗談でなければ、ラクソン自身は、搭乗員を人間、それも米兵とまで確信していたようです。


 航空機に造詣の深いリアリストが目撃した「正体不明の飛行物体」や、その搭乗員の正体は何か? ……という問いに答えを出すのが本企画の主眼ではないので、その問いに対する答えは読者の皆様方がそれぞれ検討していただくのがよろしいかと思います。参考までにお知らせしておくと、アメリカ空軍公式のUFO調査機関「プロジェクト・ブルーブック」もラクソン事件に対して「未確認(Unidentified)」の評価を下しています(ブルーブックが未確認の評価を下したのは1万2618件の事例中わずか6%ほどの701件)。


下記URLにて読めるブルーブック調査記録の上から6番目がラクソン事件(1966年3月23日、オクラホマ州テンプル)。ただし詳しい調査記録は紛失したらしく、地名の後に「missing」の書き込みが読め、他の事件には付いているナンバリングがされていないのが気になりますね。


http://www.bluebookarchive.org/page.aspx?PageCode=NARA-PBB1-365


さて、事件現場がどのような風景なのか、グーグルマップで探してみました。オクラホマ州のルート65がルート70に突き当たる手前、というとどうやらこの辺りのようです。



大きな地図で見る


 典型的なアメリカのハイウェイ、といった感じで道のまわりになにもないですね(ハイウェイ・ヒプノーシスなどという言葉が思い浮かびます)。
 まだ暗い朝の5時にこの道のど真ん中に、まぶしい光を発する謎の機体が着陸してたらさぞや奇妙な光景だったに違いないですね。そして中から野球帽にツナギの男が出てきて修理し始める! なんという見せつけ感!


 ラクソン事件は極めて「ボルト・アンド・ナット」的なUFO目撃談なのは確かなのですが、一方であまりにもリアル路線を追求した結果なのか搭乗員もただの野球帽かぶったオッサン、その一方で機体に縦書きされた謎の「TL4768」の文字列のようなストレンジ風味が混入し、現実と非現実の境目が怪しくなってきます。


 最後にもう一つ、ストレンジな要素として、オッサンの服の右肩についていたという「階級章」らしきもののスケッチを紹介します。





イラストの1〜3までがラクソンによるスケッチ。そして、A〜Cは(いずれ本企画でも取り上げる予定の)1964年4月24日にニューメキシコ州ソコロで警察官が目撃した卵形のUFOの表面に描かれていたという模様のスケッチです。この二つの類似は海外の研究者が指摘していることなんですが、ちょっと面白いですよね。

それでは今回はこの辺で。また次回の「ベストヒットUFO」でお会いしましょう。