よくわからない話

 店屋物のカツ丼を初めて食べて「美味い! こんなに美味い食い物が世の中にあったのか!!」とハマった人がいたとする。
 (押井守/大野安之の『西武新宿戦線異状なし』*1参照)
 その人は友人たちと会食するときにいつも最初にカツ丼を食べた店に行きカツ丼を食べようと主張するようになった。
 さすがに毎回同じ店ではアレだと思い友人たちが別の店に行くことを提案しても聞き入れない。
 「カツ丼以外は食べる気ないお! そしてどうせカツ丼を食べるのなら常連になったこの店でいいお!」(なぜか樽面で)
 友人たちとしては別にカツ丼食うのを止めさせようというわけじゃないが、世の中には他にも美味しい食べ物いっぱいあるんだから色々食べてみたらいいんじゃね?とか思うわけです。
 常連になったというお店ではポイントカードがあって通えば通うほどお得になるみたいで、その人のカツ丼屋通いに拍車をかけている模様。
 で、その人にとってはその店のカツ丼が世の中の店屋物のスタンダードであるという(他の店には行かないから)位置づけになっている。
 ところが本当はその店はむしろちょっと変わったカツ丼を出しているのかもしれない。
 「付け合せといえばキムチだよね」 「…(いや、カツ丼にどうなのソレ)」
 みたいな会話もその人と友人たちの間にしばしばあったりする。
 その店のカツ丼を美味いと感じるか否かは個人の味覚だからどうのこうの言う領域じゃないわけです。
 その人がその店のカツ丼食べ続けるのもその人の自由ですしね。
 友人たちとしてはただ、そんな人に別の店の別の食べ物を食わせてやりたいと思っている。
 別の店に行って初めて、今まで通っていた店がスタンダードじゃないことがわかることもあろう、と。
 比較対照があると色々と見えてくることもあるよ、と。
 もちろん、別の店に行って別の料理食った結果「やっぱりあの店のカツ丼が一番だお!」ということになってもいいわけで。
 ただ、いつも同じ店で同じカツ丼ばかり食べてるだけなのに「俺はちょっと店屋物にはうるさいよフフフ」とか言うのは見ててちょっと痛いかなと友人たちは思う。
 そういうのって、ただの傲慢かおせっかいなだけなんですかね。
 そんなことを考える昨今。

*1:

西武新宿戦線異状なし―完全版 (角川コミックス・エース)

西武新宿戦線異状なし―完全版 (角川コミックス・エース)