『ヘンリー ダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園』 in 原美術館



 この日記を読みに来るCity of Heroes/Villains プレイヤーの方なら、ヘンリー・ダーガーのことはともかく「ダーガー」という名前はご存知かと思う。
 吉井さん(id:thor)の操る孤高のGra/Kineマスター「KingDarger」を知らない日本人CoHプレイヤーがいたら、その、なんですかアレですよ、もうちょっと日本人プレイヤーのコミュニティってもんをですね(以下、老害古参による説教が500KBくらい続くがカット)・・・


 そんなわけで、通称「ダーガー先生」として親しまれているKingDargerのヒーローとしてのオリジンに関係しているのが「Henry Darger」と彼の作品『非現実の王国で(In the Realms of the Unreal)』。
 (→KingDargerとHenry Darger、そして『非現実の王国で』の関係については『痩せゆく男』の手記 04年10月14日を参照されたい)
 東京は品川の原美術館で現在開催されている*1『ヘンリー ダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園』という企画展示でこの『非現実の王国で』の挿絵の現物が観れる、ということで平日に有給休暇取得して行って来ましたよ。


 実は、一年半ほど前に銀座のハウスオブシセイドウの「アール・ブリュット展」に行ってダーガー作品の実物を観た事はある。
 でも、そのときはダーガーの個展じゃなかったので作品数もそんなになかった。
 今回はダーガーの個展であり、50点以上の作品が展示されているという「ドキッ! ダーガーだらけの原美術館」状態。
 そりゃあ期待も高まろうというものさ。


 小雨が降りしきる品川の高級住宅街(大使館が何軒かあって田舎者のオデは感嘆することしきり)の中を駅から歩くこと約20分、突如姿を現した原美術館
 そんなに大きな建物じゃないのね。

△とりあえず入り口にかかっていた企画展のパネルを激写。
(こんな田舎者丸出しなことをしているのはオデだけだったので恥ずかしかったよトホホ)


 開館時間の11時をちょっと過ぎたころに行ったのだが、結構お客さんが入ってました。
 客層的には若い女性が多かった感じ。
 生涯、現実の女性を遠ざけていた(でも幼女は大好きだったらしい)ダーガーが知ったらどう思うンじゃろか、などとどうでもいいことを考えながら早速鑑賞開始。
 あー、なんか、こう、やっぱすげぇなダーガー!
 ギャル風に言うと「パねえよ! マジ、パねえよダーガー!」って感じですか?
 ”オレがオレのために書いたオレ的ドリー夢小説非現実の王国で』”(タイプライター清書で1万5千ページに及ぶ大長編)とその挿絵により表現されるダーガーの内面世界のマンダラは深い、深すぎるぜ。
 7人の美少女戦士「ヴィヴィアン・ガールズ」、子供を虐待する悪の国家グランデリニア、子供を守護する聖獣ブレンゲン、さまざまな役まわりで登場するダーガー自身、・・・
 まさに「なんというカオス・・・」ですね。
 幼女はしょっちゅう挿画の中でハダカにさせられるし、その股間におにんにんが付いているのもすげぇカオス。
 くだらない私見ですが、『非現実の王国で』、特にその挿画はダーガーによる自作のポルノグラフィー的な意味合いもあるんじゃなかろうか。
 みうらじゅんの「エロスクラップ」、あれと似てるような気がするんだよね。
 ・・・それはともかく、展示品数も多いし、ダーガーの部屋の大家で彼の死後に*2非現実の王国で』を部屋から発見して世に知らしめたネイサン・ラーナー(この人もアーティスト)にもスポットを当てていたりして見応えありましたね。


 最後にミュージアムショップでカタログとか買ってたら、大学生らしいアンチャンがアウトサイダー・アート関連の本を手に取りながら「アウトサイダー、って時点でアートじゃないと思う」とか言ってた。
 その辺は美学的にも色々面白いところだから帰ったらおうちのひとと話し合ってみるといいぜ!とか思った。
 オデも個人的には「アール・ブリュット」とかカッコつけようが何しようが、「あっち側」の人のブツを「こっち側」のシステムに無理やり組み込んでありがたがろうとかってのは気に入らないところなんですが、そういう現実の事情があってこそ今回の原美術館でのダーガー展が成立しているわけで、ね、ホラもうキミも子供じゃないんだからわかるだろ、ン?
 (大人マニューバー)
 某SNSのダーガーコミュでも、今回の企画展示の開催が決定したころに「原美術館はセンスいいですね!」みたいな無邪気な書き込みしている人がいましたけど、そういう人がダーガーと『非現実の王国で』をどう捕らえているのか個人的には気になるマン。
 オデ?
 オデは勝手にダーガーにシンパシー持って鑑賞してます。
 ボンクラが情け容赦ない「現実」に対抗するにはやっぱ「妄想(フィクション)」の力を借りるしかないもんな!
 仕事を終えて帰宅して、孤独な部屋の中でシコシコとオレ様ファンタジーを書き続け、さらにはその挿画も自作しちゃう。
 でもさびしくないぜ、オレの妄想は三千世界を駆け巡るから!
 妄想の中じゃかわいいょぅじょ(withおにんにん)がいつもそばにいてくれるしね!
 ・・・というようなベクトルで作られたのが『非現実の王国で』というブツなんじゃないか、と。
 ある一面ではオデがCoHでやっているのと同じようなもんなんだろうな、と。
 オデはボンクラとして、偉大な先達であるダーガーをレスペクトしてますよ。


 鑑賞時間は40分ほどで終了、美術館を出ると、空は曇ったままであったが雨は止んでいた。
 そういえば生前ダーガーが近所の人とした会話(それも滅多になかったらしいが)は、きまって天気についてのことだったらしいなぁ、などと思いながら来た道を引き返し品川駅へと向かったのだった。 


ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]

美術手帖 2007年 05月号 [雑誌]

アウトサイダー・アート

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*1:7月16日(月・祝)までなので注意

*2:という風に言われてますが本当はちょっと違うらしい