スーパームアコック大戦

 新版二巻目は旧ハヤカワ文庫版二巻目『この世の彼方の海』と三巻目『白き狼の宿命』にあたる部分を収録。
 というわけで『この世の彼方の海』の第一部「未来への旅」はエターナル・チャンピオン4人とおまけ16人の総勢20人チームによる一大レイドのお話ですよ。
 ムアコックは自分のファンタジー作品を『永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)』というアイデアで纏め上げたわけですが、クロスオーバーはそんなに多くありません。
 エルリック・サーガだと今回の『この世の彼方の海』と『暁の女王マイシェラ』の二回しか他シリーズの「チャンピオン」との競演はないわけですがそれだけに盛り上がりますね。
 水島新司の『大甲子園』か、はたまたバンプレストの『スーパーロボット大戦』シリーズみたいなノリだと考えていただければ間違いないでしょう(無責任な説明)。
 エルリックは「魂を吸う黒い魔剣を持った白子」という今回登場のチャンピオン中最強の厨房超人設定ユニット。
 コルム(後期型シルバーモデル)は前期型よりパワーダウンしていますがエルリックに会った瞬間「以前ともに戦ったはずだ!」と抜かす*1重度の超人病患者。
 エレコーゼは…一番影が薄いですね。
 ホークムーンは「ブラス城年代記」の最終巻『タネローンを求めて』ヴァージョン。
 (『この世の彼方の海』では描かれない、タネローン(らしき場所)に残ったエレコーゼとホークムーンのその後は『タネローンを求めて』に詳しい。)
 こんな4人をチームリーダーにした一行が超電磁合体の荒業でアガック・ガガックの魔術師兄妹と対決するクライマックスとかもう絶対にムアコックがなにかキメて執筆していたんじゃないかと思わずにはいられない大惨事展開。
 『この世の彼方の海』はスーパームアコック大戦の一部「未来への旅」の他に、元の世界に戻るために他人の恋路に首を突っ込むエルリックの災難を描く二部「現在への旅」、宝探しのはずがエルリックがドミノ倒し的に後の自分の運命を決定してしまう三部「過去への旅」の三部構成でいずれも佳作。
 『白き狼の宿命』からはエルリックの転落人生が開始してこれまたオモロ。
 2000年以降にムアコックが執筆したエルリック・サーガ三作もこの新版にて刊行されるということなのでワクテカですね。
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    _∧ + 
 (uV∀・l    ワクワク
 (0゚・ ∪j+     ドロドロ
 と_U_)u) +

*1:『暁の女王マイシェラ』で語られる冒険で、前期型コルムとエルリック、そして姿の違うエレコーゼが共闘する。時間の流れがエルリック世界とコルム世界では違っているということらしい。