ドーヴァー・デーモン考

 自分でも発注していたのを忘れた頃に、密林から本が届いた。
 『マッド・サイエンティストの夢 理性のきしみ』(デイヴィット・J・スカル 青土社)という、ホラー映画などに登場する「マッド・サイエンティスト」をとりあげて「一般大衆が科学をどのようなイメージで捉えているか?」を考察する大衆文化論。

マッド・サイエンティストの夢―理性のきしみ

マッド・サイエンティストの夢―理性のきしみ

 1章丸まる、『フランケンシュタイン』の原作から最近のハリウッド映画までのイメージ変遷を追いかけるのに割いたりとなかなか楽しい本なのだぜ。
 で、その本を読んでたら、1970年代にマサチューセッツ州ケンブリッジ市長がアメリカ科学アカデミー会長に宛てて書いた手紙というのが紹介されていた。
 引用すると


 ケンブリッジ市長として謹んでお願いしたい儀があります。
 本日付の『ボストン・ヘラルドアメリカン』紙には、大いに懸念される二つの記事が掲載されております。
 マサチューセッツ州ドーバーでは、「奇妙なオレンジ色の目をした生物」が目撃され、ニューハンプシャー州ホリスでは、ある男性とその二人の子供が、「毛むくじゃらの九フィートもの生物」と出くわしたとのこと。
 貴台においてこれらの発見につき調査してくださいますよう、謹んでお願い申し上げます。
 また、これらの「奇妙な生物」が、万一実際に存在するとした場合、それがニューイングランド地方で行われております組み換えDNAの実験と何か関係があるかどうかもお調べ願えればと存じます。


 …あれ、ひょっとしてこの「ドーバーの奇妙な生物」ってドーヴァー・デーモンのこと?
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/9567/023.html
http://homepage3.nifty.com/kddi/doverdemon.htm
 ↑これらによるとドーヴァー・デーモンが目撃されたのは1977年。
 しかし『マッドサイエンティストの夢』ではこの手紙は1976年に書かれたものだと紹介されている。
 どちらかの情報が一年間違っているのか、それともドーヴァー・デーモンらしきものは1976年の時点で目撃されていたのか。
 とりあえずその件はスルーしつつこの手紙の怪生物がドーヴァー・デーモンのことだとしようじゃないか(いい加減マン)。
 怪生物見たっていう与太話がハーバード大学遺伝子工学研究とくっついちゃう想像力が当時あったっていうのは面白いな。
 ドーヴァー・デーモンの正体についてはそのイケメンなルックスから地球外知的生命体説が根強いようだけど、当時のケンブリッジ市民の皆さんはそうは思わなかった様子。
 市長が全米科学アカデミー会長に手紙書いたってことは当時の現地では「遺伝子組み換え実験でヘンな生き物作ってやがるんだぜ、ハーバードの奴ら」みたいな意識が支配的だったんでしょうねぇ。
 日本でもよくあるじゃないですか、原発の近くだとやたら巨大な植物だの昆虫だのが育つとかの都市伝説が。
 あれみたいな感じなのかもしれない。
 とかなんとか散漫なことを考えつつ三連休も気が付けば半分以上終わっていた、そんな感じですハハハ。