デトロイト・メタル・宇宙世紀

 世の中には、変なアレンジのカヴァーアルバムが数多く存在する。
 「琴で聴くビートルズ」やら「美少女戦士セーラームーン オルゴールファンタジア」なんてものがCDショップのイージーリスニングコーナーを探すと見つかるのだ。
 わりと知られたアーティストがへんなカヴァーやトリビュートをすることも、ある。
 土星からやってきた宇宙ジャズの伝道師サン・ラがディズニー楽曲のカヴァーアルバムを出しているのをご存知か。
 the pillowsへのトリビュート・アルバム『SYNCRONIZED ROCKERS』は、ストレイテナーエルレGOING UNDER GROUNDバンプYO-KING佐藤竹善、とどめにミスチルと参加メンバーの多くがトリビュートされるthe pillowsよりも知名度が高かったりする微妙な味わいの一枚である。
 そんな珍盤の系譜にまた一枚、いい感じのアルバムが加わった。

哀 戦士・Z×R

哀 戦士・Z×R



 Mr.BIGの元ギタリスト、リッチー・コッツェンが何を思ったのか『機動戦士ガンダム』のロック・カヴァーをリリースしていたのである。
 友人の笑点(Laughing Dot)がリリース当初に購入していて、彼の車に同乗した折に聴かせてもらった。
 その時は「酔狂なことをするな」程度にしか思っていなかったのだが、最近ふと思い出して気になったので私も購入してしまった次第。
 早速聴いてみれば、1曲目の「BLUE STAR(水の星に愛をこめて)」からしてトバしているではないか。
 ご存知かと思うが、これの原曲はアイドル時代の森口博子が歌っているものなのだ。
 それがリッチー大兄の手にかかれば、いきなりギターの「泣き」から入るロックアレンジなのである。
 ニール・セダカによる美しいメロディーラインを生かしつつも、まごうかたなきリッチー・コッツェン節が唸りを上げている。
 こちらとしてはもはやこの時点で、このアルバムがただ事ではないことに気づかされるわけだ。
 ガンダムにハマったリッチー大兄が洒落で作った「俺様版ガンダム主題歌集」・・・そんなものでは、ない。
 なにせ2曲目が「TAKE FLIGHT GUNDAM翔べ!ガンダム)」。
 リアルタイプ・ロボットアニメの始祖として知られるガンダムだが、OPのこの曲はかなり70年代スーパーロボット風味なのは皆さんもご承知のところだと思う。
 (OPそのものが、アムロが銃ぶっ放したりサムズアップしてコアファイターでカタパルト発進とかJAROに訴えたくなる絵面なわけだが)
 そんな「翔べ!ガンダム」をきっちりとロックアレンジしてしまうリッチー大兄、見事・・・いや、美事である。
 この曲をセレクトしたということは、大兄は1stのTVシリーズをちゃんと観たということなのだろうか。
 大兄も「時間よ、止まれ」「ククルス・ドアンの島」「マクベ包囲網を破れ!」などのエピソードに心を熱く滾らせたのか―
 そうだろう、そうでなくてはこの熱きアレンジはありえない・・・と勝手に思ってしまう私なのである。
 選曲基準もよくわからないが、大兄が0083や劇場版Zまで幅広く押さえているガノタであることは伝わってくる。
 唯一の難点は、アレンジしすぎで名曲「風にひとりで」がほとんど別の曲になってしまっていることぐらいであろう。
 あと、英詞の内容がアレなのはまぁ寛容にスルーしようじゃないかハハハ!


 ところで、このアルバムのライナーノーツにメッセージカードが挟まっていた。
 なぜかシンディ・ローパーが「私もこのアルバム参加したかったけど今回は都合が悪くて不参加です。 ガンダム大好きなので次のアルバムには絶対参加します!」というようなことを書いていた。
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 個人的にはシンディ大姉の歌う「星空のbelieve」とかはちょっと聴いてみたい。