『アイ・オブ・キャット』について語ってみる

 CoHのプレイ日記だけだと行き詰りそうなので私の大好きな作家、ロジャー・ゼラズニイの作品について
色々と語っていこうと思う。
 第1回は『アイ・オブ・キャット(EYE OF CAT)』ISBN:4488686044

 《おれは憎しみを学んだ。 ここに来るまで、おれは憎しみというものを知らなかった。 肉食獣は獲物を憎んだりしない。 オオカミは、彼らなりの形で、ヒツジを愛しているものだ。 だが、おれはおまえを憎むぞ、ビリー・ブラックホース・シンガー。 おまえのしうち、おれを物あつかいしたことは絶対に許さない。 この知識をおれはおまえの同類どもから学んだ。 そのときから、おれはこの恨みをおまえに告げ、恨みを晴らす日のためだけに生きてきたのだ》
 -"キャット"

 あらすじ:ナヴァホ・インディアンの末裔にして最高の異星生命体狩人、ビリー・ブラックホース・シンガー。
 恒星間を駆け巡り数多くの宇宙生命体を捕獲してきた彼もいまや引退した身だったが、ある日国連から
依頼を受ける。
 地球とストレイジ星の通商条約の締結を妨害すべく派遣された異星人の暗殺者を阻止するために協力
してほしい、と。
 変身能力や壁抜けの特殊能力を持つ暗殺者に対抗すべくビリーはかつて自分が捕らえた中でも最強の
生命体、変身獣トルグリンド・メタモルフ−通称"キャット"に助力を求める。
 高い知能を持つキャットは自分を捕らえたビリーに復讐する機会を檻の中で待ち続けていた。
 キャットはビリーに協力する代償に、暗殺者を倒した後に自分ともう一度戦う事を約束させる。
 ビリーは暗殺者を阻止できるのか、そしてキャットとの因縁に決着は着くのか−


 いやー、あらすじからしてなんというかゼラズニイ節炸裂というか無駄にカッコよくて燃える設定ですねぇ。
 で、このあらすじから推測されるクライマックスというとだいたい以下のようなパターンなんじゃなかろうか。


・パターンA 
 苦戦の末ビリーとキャットは暗殺者を倒すことに成功する。 戦いの中でビリーとキャットは友情と連帯感を
深め、結局は戦わずにビリーがキャットを故郷に逃がしてやったりしてハッピーエンド。


・パターンB
 苦戦の末ビリーとキャットは暗殺者を倒す。 そして迎える対決。 しかしキャットは暗殺者との戦いで深手を
負っていた。 結局ビリーが勝利するもキャットの敗因が対暗殺者戦にあったことを知り涙するビリー、みたいな
ビターエンド。


 で、こっから少しネタバレするから知りたくない人は読むの止めるように。
 実は、対暗殺者戦は全347ページ中135ページ目であっさり片がついてしまいます。
 で、そこから延々とビリー対キャット。
 上に書いたようなありがちな展開を拒否してゼラズニイ先生トバしまくり。
 『もっとも危険なゲーム』ISBN:415071052Xーンとか期待していると「や、約束したじゃねぇかよゼラズニイ!!」
と絶叫して文庫本を床に投げつけたくなること必至です。
 ネイティヴ・アメリカンの神話世界とか好きな方は耐えられるかもしれません。
 いやまぁ、カッコいい設定だし燃える展開だし好きなんだけどね…前半は。
 ちなみに私の脳内ではキャットのイメージは「邪悪なロデム(声:野田圭一)」。
 ビリーは「年取ったウォーケン(声:大塚明夫)」。
 脳内コミカライゼーションは諸星大二郎村枝賢一でひとつ。